ベンチは、頑張って歩いた人だけのものじゃない。

こんな青空の日は、少し歩きたくなります。
川沿いの道を進むと、古いベンチがひとつ。塗装は剥がれていますが、川を眺めるにはよさそうな場所です。

ここで休むか、それとも、もう少し先まで歩くか。
座りたいと思ったなら、座っていい。ところが、暮らしの中では、その単純なことが難しくなるときがあります。

「これが終わってから」
「もう少し頑張ってから」
「まだ休むほどのことはしていない」

自分で休む条件を増やしてしまうのです。家事が全部終わってから休もうと思っても、終わるころには次の仕事が見つかります。休む順番を最後にすると、その順番が来ない。

だから私は、休憩も先に予定へ入れてよいと思っています。空いたら休む、ではなく、ここで一度休む。十分でも十五分でも、自分で決めておくと、少し取りやすくなります。

夫婦の関係をなんとかしたいときも同じです。相手への伝え方を考える、家での過ごし方を変える、話す時間を作る。工夫はできる。でも、どれも自分が疲れ切っている状態では続きません。

まず今日、できることを小さくする。
私なら、こんな三つから考えます。

一つは、休む時間を具体的に決めること。「今週は少し楽にしよう」だけでは曖昧なので、「夕食の片づけのあと、十五分は何もしない」としてみる。することを決めるように、しない時間も決めるのです。

二つ目は、相手に必要なことだけ伝えること。「ちょっと外を歩いてくる。五時には戻るね」。ひとりの時間を取るたびに、長い説明を用意しなくてもよいと思います。予定がわかれば、お互いに動きやすくなります。

三つ目は、その休憩に成果を求めないことです。歩いたのに気持ちが晴れなかった、と採点し始めると、休憩まで課題になります。川を見た。風に当たった。それだけで終えてよい時間にしてみてください。

少し落ち着いたら、今度は「相手にどうなってほしいか」より先に、「自分はどんな一日を送りたいか」を考えてみます。ゆっくり朝食を食べたい。帰宅したら、ほっとしたい。休日は好きなこともしたい。具体的な場面を思い描くと、相談したいことが見えやすくなります。

大きな目標を一気に達成するより、明日の暮らしを少しよくする。その積み重ねなら、途中で見直すこともできます。一度決めた方法に、ずっと縛られる必要はありません。

このベンチにも、「何キロ歩いた人から座れます」とは書いていません。歩き始めたばかりの人が座ってもいいし、今日はここまで、と帰ってもいい。

空は青い。川も、ちゃんと流れている。
少し休んでから、次にどちらへ歩くか決めましょう。

谷口カウンセラー

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